いつまでも自己紹介みたいなことばかりじゃ先に進まないので、ちょっと小説というものを考えてみよう。 わたしは、理系の大学を出て会社に入りエンジニアとして数多くの文章を書いて来た。現場作業の工員さんよりも当然多いし、おそらく平均的な技術系サラリーマンよりも多くの文章を書く仕事をして来たと思う。
今まで書いて来た文章は、例えば次のようなもの。 ・実験報告書 ・調査報告書 ・出張報告書 ・会議の議事録 ・企画書、提案書 ・取り扱い説明書 ・カタログ、パンフレット ・計画書
これらに共通しているのは、次のような特徴を有する。 1)ウソを書いてはいけない 2)冗長な表現(飾り)を避けて簡潔に 3)意味が明確な表現(紛れを生じない表現) 4)情報を選別して必要最小限に絞り込む 5)情報を捏造してはいけない 6)自己を押さえて客観的に 7)各章ごとに独立させた構成(どこから読んでも分かる)
これに対して、小説はほぼすべての項目で逆の位置にある。 番号を対比してみてください。 1)ウソと言うと語弊があるが、基本的にはフィクションだ 2)飾りをつけた文章で雰囲気を作り出す 3)いくつかの解釈が出来るあいまいな表現で、読者に自由度を与える技もあり 4)情報は、多くてもかまわない(おもしろければ) 5)捏造だろうと妄想だろうとかまわない 6)主観的に作者の世界に引きずり込む 7)途中から読んでも分からないのが普通。前から読め
わたしがこれまで書いて来た文章と小説の文章との差はまったく違うものだ。 極端なのが、実験報告書、科学論文、取扱説明書などだ。 後からみつけた物だが、奈良裕明著「1週間でマスター 小説を書くための基礎メソッド<初級編>」(雷鳥社刊)の12ページに下のような図が示されている。 いろいろな種類の文章について、その位置づけを図示したものだが、わたしは、「書評」の更に右端に青い字で「理系の文章」と書き加えた。まさに、私が書いてきた「理系の文章」は、「小説」とは対極的な位置にあることを理解していただけることだろう。 このように技術屋の文章術から離れて、情緒豊かな美しい文章や人を引きずり込む創造の世界をどう作ってゆくかが、これからの課題だ。 北上大
[0回]