ミステリ小説応募家 北上大 公式ブログ
2009年10月設置 入選の反対は落選ではなく、諦めである。 どこかで入選して、小説家と名乗る日を夢見つつ。 小説執筆、水耕栽培実験、電気デジものなどテーマは雑多。
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2009
10,27
07:39
殺してやる
CATEGORY[練習課題]
奈良裕明著「一週間でマスター 小説を書くための基礎メソッド 小説のメソッド<初級編>」(雷鳥社刊)
110ページ
より
課題
お題は: 「殺してやる」
タイトルとして「殺してやる」を用いても構いませんし、テーマはそのまま、自由に別の題名を立てて書くのもOKです。
長さ: 400字詰め原稿用紙で5枚。改行で生じる空マスも含め、本文が1800~2200字になる見当で。
タイトル 「殺してやる」提出課題
「こ、殺してやるうー」
おれが奴の横っ腹に出刃を突き立てると、血が流れ落ちて奴はその場に倒れ込む、はずだった、が。
「やめだ、やめだ、声ばかり張り上げやがって、おめぇなんかに刺されて死ぬような奴はいねえよ、バカヤロー」
「どこか悪かったですか」
「どこかあ? そんなせりふはいいとこがある奴が言うもんだ。おめえなんざどこもいいとこがねぇ。全部ダメだ」
「どうしたら良いでしょうか」
「おめえの役は、俺を刺し殺すことだろう。本当に刺し殺しゃ良いだけじゃねえのかい」
「でも、本当に刺したら、座長が死んでしまいます」
「俺だって役者の端くれだ、舞台の上で殺されるのは本望ってやつだ、遠慮しねえで本気で殺せ」
舞台役者になりたくて田舎から出てきて、最初の一年は掃除と雑用ばかりで舞台には一度も立てなかった。二年目には、舞台の袖を走り回る野次馬だったり、せりふが観客に聞こえないようにひそひそ話で歩く通行人だった。今回はじめてもらったせりふが「殺してやる」で、座長を出刃で刺して逃げていくだけの、いわゆる鉄砲玉の役だった。はじめての舞台稽古で、大きい声で「こ、殺してやる」と怒鳴った結果がこれだ。
本気で刺し殺せと言われても、人を刺したことなどあるはずがないし、実際に刺して稽古するわけにもいかない。考えた末に、五キロの豚肉ブロックを買ってきた。こいつを家の柱に縛り付けて、先の尖った三徳包丁で突いてみた。ブニョっという感じでうまく刺さらない。包丁を握った腕をわき腹に添えてしっかり固定して体当たりするように刺してみた。肉の中に包丁が滑り込んでいく感触が分かった。せりふを添えてやってみた。「こ、殺してやる」と走り込んで包丁を突き立てると、ブスッと突き刺さり、ヌヌッと肉の中に入っていく。これは、今までに感じたことがない新しい感触だった。もう一度やった。「こ、殺してやる」「殺してやる」「殺してやる」おれは夢中になって体当たりをして豚肉を刺しまくった。
三日後の舞台稽古の日、おれの場面が来たところで、座長が突然言い出した。
「芳郎の芝居じゃ気合いが入らねぇから、景気づけに今日の稽古では、本物の出刃を使うぞ。みんな真剣にかかれよ」
ここまで馬鹿にされたんじゃ、おれだって本気でかかってやろうじゃねぇか、本気で殺せと言ったのは座長、あんたなんだからな、死んだって知らねぇぞ。
「こ、殺してやる」 おれは、豚肉の稽古の時のように、出刃を脇に固めて体当たりした。とたんに、おれの手がなま暖かい液体に濡れ、包丁を抜くと真っ赤な血しぶきが飛び散り、座長が崩れ落ちた。
「えっ!、座長、座長、大丈夫ですか」
「うう、よ、芳郎、よくぞ、本当に殺してくれたな」
え、本当に殺した? おれが座長を殺したってのか。頭が真っ白になって、なにも考えずその場を逃れた。どこをどう走ったのか分からないが、頭の中で声が響いた。
(おれのせいじゃねぇ、おれが悪いんじゃねぇ、座長が悪いんだ、本物の出刃を握らせたのは座長だ、本当に殺せと言ったのも座長だ)
気がつくと自宅の押入に潜り込み、戸を閉めて真っ暗な空間に一人で息を押し殺していた。どのくらい経ったのだろうか、分からない。のどがからからに渇いていた。殺人者だ、もう社会では生きていけない、このまま死んでしまった方がどんなに楽だろう。思考がぐるぐる回りどうにも動けず、ただじっとうずくまったまま時が過ぎるのを待った。
誰かが来たようだ。
「芳郎、芳郎、家にいるんだろう、出てこいよ」
返事が出来なかった、息を潜ませてじっとしていた。突然押入の戸が開けられ、一座の仲間が顔を見せた。
「芳郎、おい、どうしたんだ、突然駆け出して、座長が誉めていたぞ」
「座長が? 誉めていた? 死んだんじゃないのか」
「生きているよ」
「だって、おれが刺したら、なま暖かい血がヌルヌルって、いつもの稽古の血袋ならもっと冷たいし」
「ああ、あれか、芳郎に本物の感触を与えようって、座長が血袋を暖めておいたのさ」
「暖めておいた? 包丁を抜いたら、血しぶきが出たのは?」
「その辺は、座長の技だな、抜いた瞬間に血袋を握りつぶして、血糊を振りまいたって」
仲間に引きずられる様にして座長の前に戻った。
「座長、大丈夫ですか、申し訳ありません」
「なにを謝るんだ。良くやったじゃねえか。役者ってのはな、どっかで一皮むけなきゃ一人前にはなれねえんだ。そういうときは命懸けさ。俺だってまだ死にたくねえからケブラー繊維を挟んだ晒しを巻いて、おめぇの出刃くらいじゃ死なねぇように準備はしてたさ、こっちだって命懸けだ。おめえはちゃんと応えてくれたじゃねぇか、これからはでけえ役も回ってくるから、しっかりやんな」
「ありがとうございます」 涙が止まらなくなった。
いつかおれもこうして若手を育てるときが来るんだろうかと、ぼんやりと思った。
読み返してみると、本物の出刃包丁を使うシーンが唐突過ぎてリアリティがないなぁ。このように、自分で推敲して疑問を感じるところがあるようなら、読者はもっと強く感じるはずだから、修正しなければならないと、奈良先生が書いていたな。
修行! 修行!
北上大
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ケプラー
北上先生お早うございます。
(当然小説家になられました以上、これからは先生と呼ばしていただきます)
プロットは面白いと思ったんですが、ケプラーで引っかかってしまいました。先に豚肉で練習したらケプラーの手応えと肉の手応えに違いが有って当然だと思えてしまいます。それと一般の方でどれほどケプラーと言う物が
判るかどうか、普通辞書を側に置いて小説を読まれる方は少ないと思います。
私の浅はかな考えですが、豚肉の塊を腹にまきその下にアルミ板などで防御をした方がつじつまが合うような気がします、当然最後にアルミ板に当たる感触も有るはずですが、そこをうまく処理できれば話しに厚みを出すことも出来るんじゃ無いかと思ったりしています。
つまらない、つっこみですがこれもひとえに大小説家を目指される先生の為と思って聞き流してください。
【2009/10/2908:39】||三十里#56ad951931[
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ケブラーって一般的じゃない?
三十里さん
こんな練習課題に批評を頂いて恐縮です。まだまだ、小説の基本形を学んでいる最中で、批判や批評を頂く段階ではありませんが、読んで頂いていることだけでも光栄です。
将来、まかり間違って有名になったら、北上大を育てたのは三十里さんだと、胸を張ってください。三十里さんに胸を張ってもらえる日が来るように、更に修行を続けます。ってか、まだ始めてから2週間ですけどね。
ところで、ケブラーってやっぱり一般的じゃないですかね。防弾チョッキや防刃手袋などに関心のある向きには、常識となっている超強力繊維ですが、文字数制限から解説を入れる余裕がありませんでした。文字数を考えた設定が必要だったのですね。
修行! 修行!
【2009/10/2909:42】||北上大#554f4bd02c[
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